装飾について_Design Museum Gent



夏期休暇を利用してベルギー・ヘント(Gent) を訪れたおり、 Design Museum Gent に行ってみた。

老舗ホテルであった建物を改装したこの博物館は17~18世紀の装飾工芸品からアール・ヌーヴォー、アール・デコ、モダン、ポストモダン、そして現代までのデザインを蒐集した実にユニークなものだ。個人的に興味があったのは1980年代に活躍したデザイン集団メンフィスのデザインした製品群を目の当たりにできるということ。日本ではほとんど実物を目にする機会がなく、デザイン史の教科書でしか知らなかっただけに、これを機会に見ておこうと思ったのだ。

アール・ヌーヴォーから現代までのデザインを俯瞰しつつ、メンフィスをみてはじめて気づくのは『デザインとは装飾である』というテーゼも成り立つのではないかということ。それはこの博物館が1992年まで「装飾美術館」と銘打たれていたことからも伺える。

そもそも装飾の歴史は古く、有史以前、フランス・ラスコーに代表される洞窟壁画やタトゥーなどの身体装飾にまで遡ることができるといわれ、その目的は諸説あるにしろ、呪術的な意味合いがあったことは間違いないとされる。呪術的なものとはつまり、人間が世界に関わっていく過程で「祈り」「願い」「欲望」「畏怖」などとして未来へと投機されるものであり、それは道具の発生と同じく常にア・プリオリなものだ。道具が世界と関わるために連関として作り出されるア・プリオリなものだとすれば、装飾もまた、その原初の段階から道具とは不可分かつ同質な要素であったのだとさえ言えるし、自身やモノを飾る行為は人間特有の社会的なものでもある。

モダンデザインの洗礼を受けてしまった現代日本の我々は工業デザインを考える上で『デザインとは装飾である』という物言いには違和感を感じ、拒否反応をさえ示してしまうが、装飾美術史やデザイン史を俯瞰するうえではバウハウスに代表される虚飾を排した合理主義、機能主義的なデザインといった概念の方が実は異端であり、ある意味で極論であることに気づく。事実、モダンデザインの旋風が収束したのち、ポストモダンとしてメンフィスなどのデザイン集団が現れ「人間の内的な力」「呪術的なもの」「自然と人工物の融合」「崇高と邪心の結合」などを掲げて活動を展開したのはその反動のようにも見える。そのメンフィスがデザイン要素として安価な合板にポップな色彩と装飾パターンを多用したというのは非常に興味深い。もちろんメンフィス自身もバウハウスとは対極に位置するもうひとつの極論であったわけで、現在までにその振れ幅のなかでデザインが再思考され、ドローグデザインなどの運動へとつながっていったということになるのだろう。

「形態は機能に従う」という言葉がひとつの視点たりうるのならば、
「形態は装飾を伴う」という言葉もまたひとつの解釈たりうるのだ。

ここ数年、トレンド策定にあたっての情報収集のおり、各方面からメンフィス再評価の声をきくことが多いが、ここを訪れればそれを実感することができるはずだ。

Design Museum Gent

※2009年8月28日に余所にて掲載したものを改題し、ここに再掲いたします。(urikura)