ittala - dinnerware "Origo"


ヨーグルトを食べたら、ittala が家にきた。それでいいのか。そんなふうに思った。


時は3ヶ月ほど前にさかのぼる。アムステルダムから帰国したばかりの私は生活の基盤づくりに追われていた。引越をすれば誰でも実感する事だが、日常生活をつつがなく送るには意外に多くのモノを必要とする。海外からの引越ともなれば荷物容量の制限もあって、全てを持ち帰る訳にはいかなくなる。しかもそれらは船舶で送られてくるのが普通なので、2~3ヶ月ほどのタイムラグが発生してしまうのだ。


そこで食器類などはよほど高価なものやお気に入りのものをのぞいて現地で処分し、転地にて新たに買い替える事になる。時間も限られているし、他にやるべきことも山積みだったので、食器類はある生活雑貨ブランドのものをネットショップにて購入したのだが、これがいけなかった。白っぽくミニマルなかたちの食器はそれ単体では良いかもしれない。ただ料理を盛ったときが問題だ。日本食の色彩は洋食のそれと異なり繊細かつ中間調のトーンが多いが、それを白っぽい磁器に盛ってしまうと谷崎の「陰影礼賛」よろしくなんとも味気なく食欲を刺激しない見場が出来上がる。なるほど食は文化というが、それは味覚や嗅覚だけのことでは決してなく、視覚にも言えることなのだと改めて実感した。そういった意味では世界中にいまだ食器ブランドが多くあり、消費者から支持されているのが理解できる。生活雑貨ブランドに取って代わられていない理由がそのあたりにあるのではなかろうか。


さて、とはいえすでに食器は購入してしまった。予算も限られているし、いまさら買いなおすわけにはいかない。そこに妻が見つけてきたのがヨーグルトの懸賞応募要項。なんとヨーグルトを食べて応募すれば ittala Origo というデザートボウルが当たるという。Origo ittala 傘下の磁器メーカー ARABIA FINLAND 1999年より製造しているもので、Alfredo Häberli のデザインによるカラフルなストライプが印象的な磁器シリーズだ。すでにいくつかの Origo カップを所有していたし、いづれこのシリーズは自ら購入して揃えたいと思っていたので、これ幸いとヨーグルトを食べ、8通ほど応募してみたら、なんと2つも当たってしまった。


しかしそこで考える。応募して当てておきながら言うのも何だが、ittala の磁器がヨーグルトの懸賞で当たってしまうというのはブランドの格を下げてしまうのではなかろうか。ittala といえば欧州でもそこそこ地位のある食器ブランドである。オランダでの生活から得た実感に即して言えば、ヨーグルトの懸賞に出てくるような安いブランドではなかったはず。ittala は本国フィンランドや欧州圏と同じように、日本でのブランディングにもっと注意を払うべきだと思うのだが。


ファストファッションのような安物嗜好品に押され、プレタポルテといった高級既製品が売れない時代。モダンデザインの存在意義そのものが問われているが、デザインが体現するものは最低限の機能だけではなく、高級なステータスのみでもないはずだ。そういった意味で ittala にはテーブルウェア界におけるモダンデザインの旗手として、巷にあふれる粗悪なコピー品にも負けず、その価値を損なわぬよう頑張って欲しい。


そう思いながら、今日もそのデザートボウルでヨーグルトを食べている。(urikura)