Trend Book: heimtextil TRENDS 10/11 "UNI[RE]VERSE"


日本に帰国したあと、気になることがある。
それは Trend の意味を「流行」だとおもっているひとが非常に多いということ。辞書を引いてみればすぐに分かることだが Trend の意味は「動向、傾向、趨勢」であって「流行」ではない。「流行」に対する英単語は Fashion となる。(その他にも Vogue や Mode という単語もあるが、ここでは論旨を明確にするために Fashion を例にとりあげる)Trend は社会の傾向からくる新しい価値観や思考様式のことを指し、Fashion は新しいものとして受け入れられた行動や製品、スタイルなどを指す言葉だ。つまり Trend とは様式や価値観といった抽象概念のことであって、いまどきな色やカタチを指すものではない。

このことは言語学的にも検証できる。日本ではよく「トレンドカラー」という言葉を見かけるが、これは明らかに「流行色」「流行している色」という意味で使用されている。ところが Trend Color を厳密に日本語訳すれば「傾向色」「傾向している色」となってしまい、日本語の言い回しとして成立しなくなる。もちろん英語圏でも通用しない。正しく「流行色」と言いたければ Fashion Color、体系的に色相ごとの流行色を示したい場合には Color Trend(色の傾向)とすべきで、「トレンドカラー」という言葉は明らかに奇妙な和製英語なのだ。

そういった意味で、この heimtextil TRENDS 10/11 では本来の「トレンド」が扱われ、分析されているといえる。

ファッションやインテリア業界に従事されている方はよくご存知だとおもうが、フランクフルト国際展示場では毎年1月に heimtextil(ヘイムテキスタイル)というテキスタイル専門の見本市が開催されている。そこでは5年ほど前からトレンドエージェントやカラーリストら数人の専門家を集め、主にファション、インテリア関連におけるカラートレンドのレクチャーを行い、トレンドブックを発行している。デザインに関わりのないひとの中には「トレンドブックとは何ぞや?」という方も多いかもしれないが、要は社会の価値観がどのように変遷しているのかを見極め、今後向かって行くであろう方向性を策定し、それらを記述したもののことを言う。もちろんこの冊子の場合、視点はテキスタイルにおけるトレンドに置かれているので、その傾向を最終的にはそれぞれの方向性に合致するカラーサンプルやテキスタイルサンプルとして提示することになる。私はアムステルダム赴任時にジェネラルトレンド調査の一環として第一回のレクチャーに参加しており、その後、毎年発行されるトレンドブックを購入しているのだが、とくに今年からは社会背景の考察が各ダイレクションそれぞれに付与されていて、より詳しく欧州のトレンドを理解することができるようになっている。

英語/独語表記のみで市場に流通しているものではないので、一般の書店で目に触れることはないかと思うが、購入してみたいという方は下記に問い合わせてみると良いだろう。(urikura)

メサゴ・メッセフランクフルト株式会社