石の物語



一個の石がある。
すこし端が欠けている。
そこにあるうちは、ただの路傍の石である。

載せれば、鎮になる。
打ち付ければ、鎚になる。
放れば、球になる。
放り合えば、遊具になる。
投げつければ、武器になる。
研げば、刃になる。
集めれば、資料になる。
飾れば、碑になる。
拝めば、神になる。

割ってみる。
内にはアンモナイトの化石が眠っている。
5億年という時間が立ち顕れる。
元に戻す。

一個の石がある。
それはただの石ではなくなっている。

(urikura)