医療と3D技術

今朝、手術を受けた。昔、左奥歯を虫歯で治療したはずだったが、完治せず歯根に残った虫歯が悪化し、歯根先端に病巣(膿のかたまり)が出来てしまった。それが原因となり、上あごまで炎症をおこし、あごの骨を浸食し穴が空いてしまった。そのため、歯根を切除して病巣を取り出し、穴の空いた部分をパテ埋めする手術をする事になったわけだ。

手術をする前に、“歯科用3次元X線断層撮影”なるものを受けた。いわゆる3Dスキャンである。この3D画像を使って、先生から手術の内容を丁寧に説明を受けた。その画像から、上あごに穴が貫通しているのが鮮明分かるだけではなく、その部分を断層化して内部からも詳しく状況を把握することが出来た。穴は2カ所あり、もう1カ所は内側に貫通している。その穴には膿が溜まっていているらしく、それをきれいに掃除をしてパテ埋めする作業となった。

この3D画像による説明はとても分かりやすく、自分の骨に穴が空いていることにとても感動した。お陰で、ヤスリやドリルでグリグリと骨を削っている作業中も、自分の頭の中で治療の経過をイメージできた。それは、治療に対する安心感につながるといえる。

このように、今や医療の世界で3D技術は欠かせない。昨年のグッドデザイン賞で金賞を受賞した“医療用3D臓器シミュレーター”は記憶に新しい。

最近では医療現場だけではなく、家電量販店でも3Dプリンターや3Dスキャナーが売られ、家庭でも使われる時代になった。

3D技術は、そもそも医療を目的に開発されたのではなく、工業製品のラピッドプロトタイピング( 迅速=rapid 試作=prototyping)を目的として開発され30年以上の歴史がある。我々にとっては、米国駐在中の1999年に3Dスキャナーをデザインプロセスに使った時が最初の経験だった。とはいっても、スキャンする業者に来てもらってクレーモデルをCADデータ化したので、3D技術を目撃しただけだったが。



今日、3Dプロセスはデザインの現場では日常になり、その技術が医療の世界にも応用され、こうして私の治療にも使われた事は感慨深い。

(tarokin)

右上の3D画像に穴が二つあるのが確認できる