
『エコロジーやサスティナビリティーというだけではもはや十分ではありません。原始的な素材や有機的なシェイプが必要で(中略)その結果としては、アニミズムのリバイバルでしょう。』リー・エデルコート
東京ミッドタウン、 21_21 DESIGN SITE にて行われている企画展。本企画をディレクションしているオランダ人、リー・エデルコートはヨーロッパにおけるデザイントレンド研究の第一人者で、私がアムステルダムに赴任していたころトレンド情報収集の一環として彼女の行うレクチャーに参加していた。それも手伝ってか、本展に足を運んでみる。
内容は『大転換の時代』として化石燃料に依存したモダンデザインの終焉を宣言しつつ、来る未来にあるべきデザインのありさまを若手デザイナーの作品を通じて表出しようという試みだが、それは概ね成功しているといえるだろう。コンテンポラリー・アートと見紛うばかりの印象的な展示物が並び、時にそれはグロテスクでさえある。各作品にみられる要素としては XXL(エクストラ・ラージ/予想をこえた大きさ)、動植物の模倣、生体工学的なカタチ、原始的な様態などが挙げられるが、これらは heimtextil にて発行されているトレンドブックに記述されている事柄とも重なっている。このような傾向はヨーロッパに住んでいれば実感を持って理解できるのだが、日本からみるとどうしても絵空事のように思えてくるのはその地理的、文化的な距離ゆえか。
しかし気になることがある。
本展においてアニミズム的表層がひとつのキーワードとなっている。自然を「自ずから生成するもの」(フュシス)ではなく、「マテリアルとしての質料」(フュレー)と規定する思想を発展させたのはプラトンのイデア論であり、欧州文化はこのプラトニズム(プラトン主義)を起点としたことでこれに束縛されていると看過したのはニーチェだが、これらの作品群はたしかにアニミズム的表層を模倣してはいるものの、それを塑造のための材料として扱っている点でプラトニズムを越え出ていないようにみえる。そういった意味では非常に欧州的な価値観に則った視点によるディレクションであるといえる。
欧州はそれでよい。では日本はどうするのか、そこが問題なのだ。
丸山眞男によれば日本のアニミズムの本質は、欧州的な「つくる」神話と異なり、自然は自ずから「なる」ものであり、それは「歴史意識の古層」に沈殿しているとされる。その精神は日本人の場合、常にそこにあるものであり、美意識といったかたちを持たないものとして表出する。欧州のクリエイターが極めて欧州的に彼らのアニミズムに立ち返るとき、日本の我々は自らの「歴史意識の古層」を掴み出し、それに表現を与えることができるのだろうか。
デザインにおける今日性や今後の日本を考える上での鏡としてなど、ざまざまに楽しめる企画展なので、興味のある方はぜひ足を運んで欲しい。(urikura)
website